卓球のドライブが「伸びる」・ツッツキが「止まる」のはなぜ?バウンドの瞬間に起きる摩擦と回転の物理
ドライブが「伸びてくる」。ツッツキが「止まる」。横回転サーブが「跳ねてから横にずれる」。卓球をやっていれば誰でも感じる現象ですが、どれもボールが台に触れている、ほんの1000分の1秒ほどの間に起きています。その瞬間にボールと台の間で何が起きているのか、今回はそこを覗いてみます。
台に触れた瞬間、ボールは「滑って」いる
飛んできたボールが台に着地すると、ボールの底の部分が台の表面をこすります。このとき、底の部分がどちらの向きに動いているかで、摩擦力の向きが決まります。ここが全ての出発点です。
回転のないボールなら、底は進行方向に滑ります。台はそれを止めようとして、進行方向と逆向きの摩擦力をかけます。その結果、ボールは少し減速し、同時に底が引きずられて前進回転がつきます。回転のないボールが台で跳ねると、ほんの少し前進回転がかかって飛び出していくのです。
ドライブが「伸びる」理由
前進回転のボールでは話が変わります。前進回転とは、ボールの底が後ろ向きに動く回転です。回転が強ければ、底が台に対して後ろ向きに滑ることになります。すると摩擦力は進行方向に働きます。台がボールを前へ押し出すのです。
これがドライブの「伸び」の正体です。回転のエネルギーが台との摩擦を通じて前へ進む速さに変わり、本来なら減速するはずの場面で逆に前へ押される。受けている側には「加速して向かってくる」ように感じます。跳ね方も低く、滑るように出てくる。上級者のループドライブが「台から伸びて取りづらい」のは、台との摩擦の仕業です。
ツッツキが「止まる」理由
下回転はその正反対です。下回転ではボールの底が進行方向に動いているので、底は台の上を前向きに、しかも回転のないボールよりはるかに速く滑ります。台はそれに強くブレーキをかけます。ボールは大きく減速し、前へ進む力を失って、高めに「立つ」ように跳ねます。
「ツッツキが止まる」「カットが戻ってくる」と言われる現象はこれです。台の摩擦がボールから前へ進む速さを削っている。だから強い下回転のボールに手を伸ばすと、思ったより手前で失速して、打点が狂います。
回転は「飛んでいる間」より「跳ねた瞬間」に変わる
意外に思われるかもしれませんが、ボールの回転は空中ではほとんど減りません。空気抵抗で削られる回転は飛んでいる間に1〜2割程度。回転が大きく変わるのは、台に触れた瞬間です。
台でどれだけ回転が変わるかは、着地の角度で決まります。研究でも、ボールは着地して滑っている間に摩擦で回転が書き換えられ、多くの場合は接触中に「転がる状態」まで移行することが確かめられています。高く跳ね上がるボールほど台を強く踏みつけるので摩擦も強く、回転は大きく変わります。低く滑り込むボールは摩擦が弱く、回転が残りやすい。
ここから一つ、実戦的な話が導けます。低いツッツキは回転が残ったまま相手に届き、浮いたツッツキは台で回転が抜ける。浮いたツッツキが打たれやすい理由は二つあって、打点が高いことに加えて、回転そのものが台で削られているのです。
明日の練習で試すなら
相手のボールが「伸びる」か「止まる」かを、跳ねる前に判断する練習をしてみてください。判断材料は相手のラケットの軌道と、ボールの高さです。高い軌道の下回転は台で回転が抜けやすく、低い前進回転は伸びてきます。
跳ね方は気まぐれに見えて、台と摩擦のルールに従っているだけ。
跳ね方を読めるようになると、打点のズレが減ります。ボールが跳ねてから動くのをやめて、跳ねる前に先回りして待てるようになるからです。
とはいえ、「伸びる」「止まる」の見極めは、実際にいろいろな回転のボールを受けて初めて体に入ります。S_ONE卓球スタジオでは、コーチが回転量を変えながら球出しをして、一人ひとりの「読み」を鍛えていきます。無料体験も受け付けていますので、「回転のあるボールに振り回されたくない」という方はぜひ一度お越しください。
※ この記事の物理の説明は、要点が伝わるように簡略化しています。台との接触中の挙動は着地角度・ボールの速さ・台の表面状態によって変わるため、目安としてご覧ください。